インデックス投資で情報を集めていると、ETFというワードを耳にするようになるかと思います。初心者には投資信託だとか、ETFの方が経費率が安くておすすめだとか、色々な情報で初心者投資家を悩ませてきます。インデックス投資をする上では、結局どちらが良いのでしょうか?
今回はコストの観点から投資信託とETFを比較し、投信 vs ETFの戦いに結論を出したいと思います。
ETFって何?
ETFはExchange Traded Fund(上場投資信託)の略で、証券取引所に上場されている投資信託のことです。最初に聞いた時、私はこれがどういうことなのかよく分からなかったのですが、どちらもたくさんの銘柄を簡単に変えるようにした商品で、内容的には同じものです。両者の決定的な違いは売買の仕方にあります。
ETFは上場されているので、個別の企業の株式と同様に、1口1買うのに必要な金額が変化します。例えば、米国のS&P500指数に連動する代表的なETFであるVOOは、2024年8月の時点で1口490ドルです。1ドル145円とすれば、71050円の倍数の金額が必要ということです。証券取引所が営業していれば、リアルタイムでいつでも売買ができます。
一方、投資信託は100円から1円刻みで売買の金額を指定できます。投資信託の方が圧倒的に売買しやすいですね。これが、初心者には投資信託が良いと言われる要因の1つです。上場していないので、証券取引所の営業日の終値を元に基準価格が決定されます。
また、投資信託は分配金が出ないものがありますが、ETFは基本的に分配金を出します。
両者の違いをまとめると、以下のようになります。
売買方法 | 売買のタイミング | 分配金の有無 | |
投資信託 | 100円から1円単位 | リアルタイム | 出さないものもある |
ETF | 1口あたりの額が変動 | その日の終値 | 基本的に出す |
ETFは何が良いのか?
ETFがなぜ多くの投資家から好まれるのかというと、以下の点が挙げられます。
- 運用コストが最安のものがある
- リアルタイム取引により、タイミングを計った売買が可能である
- 種類が多い
好まれる理由の最有力候補は、運用コストの低さです。一番低いもので経費率は運用額の0.03%(VOO, VTIなど)です。日本では長い間、投資信託は運用コストが高いものしかなく、インデックス投資をするとなったらETF一択でした。
また、安く買って高く売る、を実現させようと思うと、タイミングを計りたくなるもので、特に短期で利益を出したい場合にはリアルタイム取引は強力な武器になります。ただし、インデックス投資家であれば長期投資が前提の方が多いですから、これはそれほど大きなメリットではありませんね。
種類が多いというのも魅力の1つで、投資家のニーズを満たした商品が見つかりやすいです。
分配金を出さない投資信託とはどういうものか
投資信託には分配金を出さないものがあります。これは分配金をファンドがぶん取っている訳ではありません。分配金は基本的にファンド内で再投資されており、再投資後の株価が投資信託の基準価格に反映されています。
分配金を再投資すれば、資産増加のスピードが上がります。ETFや個別株で再投資をしようとすると、株価は絶えず変化するので、ほとんどの場合、余りが出たり株価が高くて買えない、という面倒な事態になります。一方、投資信託では100円から1円刻みで買えるので、仮に分配金が出たとしても再投資しやすいですね。分配金が出ない投資信託ではさらに投資家が再投資の注文をする手間を省けますから、とても楽ちんです。
税金の面でも分配金が出ない方がにメリットがあります。分配金が投資家に渡ってしまうと、税金がかかってしまうからです。課税口座の場合、国内株であれば20.315%、外国株であれば20.315%+外国税10%がかかります。この外国税は、外国税額控除を利用することで取り戻すことができますが、自分で確定申告をする必要があります。
このような分配金が出ない、ファンド内で勝手に再投資される投資信託であれば、この20%程度の国内税がかかりません。外国株の場合は外国税10%はかかりますが(この場合は外国税額控除は利用できません)、20.315%の半分程度ですみます。
なお、分配金が出ないということは、基準価格に分配金の再投資が反映されるということなので、口数は増えません。NISA口座のような上限が決まっている口座の場合は、非課税枠を消費せずに配当再投資が出来るので、投資家にとって都合の良い特性となります。
トータルコストで勝負
ファンドを運営している資産運用会社に支払うコストだけを考えれば、ETFが最も低コストとなりますが、実際には税金コストや売買手数料も投資家が負担する必要があります。これらを考慮したトータルコストでは、ETFと投資信託のどちらが良いのかを比較します。例として、全世界株インデックス、S&P500、連続増配系インデックスの3つで調べてみます。
全世界株インデックス
VTとemaxis slimオールカントリーで比較します。
下の表が今回のトータルコスト計算に使用したデータです。
運用にかかる経費率ではETFであるVTの方がemaxis slim オルカンより0.061%低いですが、配当にかかる税金を含めたトータルコストは投信 < ETFとなりました。
ファンド | 経費率 (%) | 分配金利回り (%) | 分配金にかかる税金(外国税額控除前) (%) | 購入時手数料 (%) | トータルコスト (%) |
emaxis slim オール・カントリー | 0.131 | 1.84 | 10 | 0 | 0.315 |
VT | 0.07 | 1.84 | 20.315 + 10 | 0 | 0.444 |
S&P500
VOOとemaxis slim S&P500で比較します。
下の表が今回のトータルコスト計算に使用したデータです。
運用にかかる経費率ではETFであるVOOの方がemaxis slim オルカンより0.101%低いですが、配当にかかる税金を含めたトータルコストは投信 < ETFとなりました。
ファンド | 経費率 (%) | 分配金利回り (%) | 配当にかかる税金(外国税額控除前) (%) | 購入時手数料 (%) | トータルコスト(%) |
emaxis slim S&P500 | 0.131 | 1.3 | 10 | 0 | 0.234 |
VOO | 0.03 | 1.3 | 20.315 + 10 | 0 | 0.294 |
連続増配系インデックス
VIGとSBI V 米国増配インデックスファンドで比較します。
下の表が今回のトータルコスト計算に使用したデータです。
運用にかかる経費率ではETFであるVIGの方がemaxis slim オルカンより0.064%低いですが、配当にかかる税金を含めたトータルコストは投信 < ETFとなりました。
ファンド | 経費率 (%) | 分配金利回り (%) | 分配金にかかる税金(外国税額控除前) (%) | 購入時手数料 (%) | トータルコスト (%) |
SBI V VIG | 0.124 | 1.76 | 10 | 0 | 0.300 |
VIG | 0.06 | 1.76 | 20.315 + 10 | 0.45 | 0.433 |
ほぼ全てのインデックスで、投信が最適解
以上のように、分配金にかかってしまう税金を含めて考えると、2024年8月時点ではETFより投信の方がコストが低いという結果になります。
さらに、ETFの場合には分配金を再投資しようと思っても1株単位でしか購入できないことから、ほとんどの場合で端数が出ることになりますが、投信の場合にはきっちり勝手に再投資されて基準価格に反映されます(いつ、いくらの額が再投資されたかを確認することはできませんが)。
なお、上記では米国ETFを比較に用いましたが、国内ETF(1655など)でも同様に、投資信託の方がコストが安くて売買がしやすいという結果になります。
ここまで書いておきながら、実はコストに関しては両者に差があるといっても0.1%前後なのでそこまで気にする必要はないかと思います。しかし、ETFは売買がしにくいこと、そしてそれ故に分配金再投資がしにくいことは、重要な違いになります。
資産の最大化、管理の楽さ、売買のしやすさ・取り崩しの容易さ、これら全てにおいて投資信託に軍配が上がります。リアルタイムで取引をしたい場合にはETFとなりますが、インデックスファンドの長期投資の場合にタイミングを図って投資をする意味は薄く、現時点では投資信託が最適解となります。
まとめ
インデックスファンドに関して、投資信託とETFを比較しました。まとめると以下のようになります。
- 運用額の経費率はETFの方が安いが、配当にかかる税金や購入時手数料を含めたトータルコストでは投資信託の方が安くなる。
- ETFは1株単位での売買となるため、分配金再投資がしにくい。一方、投資信託は100円から1円刻みで売買でき、また、分配金が出ないものでは勝手に再投資されるので、分配金再投資がしやすい。
現時点では投資信託の方が良い投資先と言えそうです。
- 個別株を数えるときは〜株、投資信託・ETFを数えるときは〜口、という決まりのようです。 ↩︎
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